親の介護が始まったら、お金は月いくらかかるんでしょうか。
「介護費用は総額500万円」という数字を見たことがあるかもしれません。あの数字をどう読めばいいのか、そして介護保険でどこまで賄えるのか。我が家はまだ介護が始まっていないので、これは経験談ではなく、始まる前に押さえておく「平均の読み方」と「保険の範囲」の下調べです。
先に言っておくこと
- 介護費用の平均は月9万円。ただし実態は、在宅なら月5.3万円、施設なら月13.8万円と大きく分かれます。「総額500万円超」は、月額の平均に期間の平均を掛けた参考計算の数字です
- 介護保険の給付は介護サービス費が中心で、住宅改修と福祉用具購入にも別枠の給付があります。在宅のサービス費には月ごとの限度額があり、その範囲内なら自己負担は1〜3割。超えた分と、施設の食費・居住費、日用品は原則として自己負担になります
- 費用の見通しを立てるときは、まず親の年金・預貯金と、月々の費用を並べて整理します。実際の負担の仕方や資産の管理は、家庭の事情や親本人の意思確認で変わるので、必要に応じて地域包括支援センターや専門家に相談します
まず「平均」の読み方から:月9万円は誰の平均か
月々の平均は9.0万円、一時費用が47.2万円、期間は平均4年7か月。「総額500万円超」という数字は、これらを掛け合わせた参考計算から来ています。
生命保険文化センターの調査(2024年度)では、介護に要した費用は、月々が平均9.0万円、住宅の改修や介護用ベッドの購入などの一時費用が平均47.2万円、介護の期間は平均55.0か月(4年7か月)でした。月額平均9.0万円に平均期間55.0か月を掛け、一時費用47.2万円を加えると、参考計算では約542万円になります。ただし、これは別々の平均値を用いた概算で、個別の総額や平均総額を示すものではありません(この調査は、過去3年間に介護経験のある2人以上世帯を対象にしたものです)。
ただし、月額の平均は在宅と施設で大きく分かれます。
| 介護の形 | 月額の平均 |
|---|---|
| 在宅介護 | 5.3万円 |
| 施設介護 | 13.8万円 |
| 全体 | 9.0万円 |
「平均9万円」は、この2つを混ぜた数字です。自分の親がどちらの形になるかで、見るべき数字は変わります。
要介護度別に見ると、度が上がるほど高い傾向はありますが、きれいには増えません(要介護4が月12.4万円で最も高く、要介護5は11.3万円)。平均はあくまで目安で、実際の額は使うサービスの量で決まります。
介護保険で賄える範囲:自己負担は1〜3割
介護サービス費の自己負担は1割が基本です。2割・3割になるのは、所得の高い一部の人だけです。
介護保険のサービス費は、本人の所得に応じて自己負担の割合が決まります。以下は、原則65歳以上の第1号被保険者の判定目安です。40〜64歳で介護保険サービスを利用する人、住民税非課税者、生活保護受給者などは扱いが異なるため、届く負担割合証または市区町村で確認します。
| 負担割合 | 判定の目安(本人の合計所得と、年金収入+その他の合計所得) |
|---|---|
| 3割 | 合計所得220万円以上、かつ単身で340万円以上(世帯に他の65歳以上がいる場合は463万円以上) |
| 2割 | 合計所得160万円以上、かつ単身で280万円以上(同346万円以上) |
| 1割 | 上記に当たらない人 |
自分の割合は、市区町村から届く「介護保険負担割合証」で確認します。在宅で居宅介護支援を利用する場合、ケアマネジャーによるケアプラン作成費は原則として全額が介護保険給付の対象で、利用者負担はありません。利用形態によって費用の扱いは異なります。
在宅介護の上限:支給限度額という天井
在宅サービスには、要介護度ごとに月の天井があります。天井の中なら自己負担1〜3割、天井を超えた分は全額自腹です。
| 要介護度 | 月の限度額(区分支給限度基準額) |
|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 |
| 要支援2 | 105,310円 |
| 要介護1 | 167,650円 |
| 要介護2 | 197,050円 |
| 要介護3 | 270,480円 |
| 要介護4 | 309,380円 |
| 要介護5 | 362,170円 |
この限度額は「サービス費の総額」の天井です。たとえば要介護2で限度額いっぱい使えば、1割負担の人の自己負担は約2万円です。住宅の改修(上限20万円)と福祉用具の購入(年10万円まで)は、この天井とは別枠です。
施設に入ると何が増えるか
施設は「サービス費の1〜3割」に、食費・居住費・日用品が丸ごと上乗せされます。
厚生労働省の解説では、特別養護老人ホームについて、要介護5・1割負担・30日利用・日常生活費約1万円を置いた例として、多床室は約109,930円、ユニット型個室は約146,980円です。実際の額は居室、負担割合、施設の設定、負担限度額認定の有無で変わります。調査の平均(施設13.8万円)は比較の目安にはなりますが、集計対象と条件が異なるため、金額を直接比べることはできません。
在宅との差は、サービス費そのものより、食費と居住費が毎月まるごと乗ってくることです。有料老人ホームでは、これに入居一時金や管理費が別に加わります。
施設は、要介護度で「入れるかどうか」も違う
お金の違いだけではありません。介護保険の施設サービスは要介護1からが対象で、特別養護老人ホームは原則として要介護3以上でないと入れません。
施設サービスは要支援1・2では使えません。さらに、施設ごとに入れる要介護度が分かれています。認知症の人向けのグループホームだけは、要支援2から使えます。
| 施設・住まい | 入れる要介護度 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 原則、要介護3以上 |
| 介護老人保健施設(老健) | 要介護1以上 |
| 介護医療院 | 要介護1以上 |
| グループホーム(認知症対応型共同生活介護) | 要支援2以上(要支援1は使えません) |
特養の「要介護3以上」は、2015年4月からの扱いです。要介護1・2でも、認知症で在宅の生活が成り立たない、家族の支援が期待できないといった、やむを得ない事情がある場合は「特例入所」が認められることがあります。特例入所に当たるかどうかは、申込みのときに事情を示し、自治体・施設の手続きの中で判断されます。
つまり親の要介護度は、「月いくらかかるか」だけでなく、「いざというとき、どの施設を候補にできるか」にも大きく関わります。度によって、候補にできる施設が絞られる場合があります。
払い過ぎを止める仕組み:上限と軽減
サービス費の自己負担には月の上限があります。一般的な世帯で44,400円。ただし、初回は市区町村への申請が必要な場合があります。
高額介護サービス費という仕組みで、1か月の自己負担が上限を超えると、超えた分が後から戻ります。
| 世帯の区分 | 月の上限 |
|---|---|
| 一般的な世帯 | 44,400円 |
| 所得の高い世帯 | 93,000円/140,100円 |
| 住民税非課税の世帯 | 24,600円(本人の年金収入等が一定額以下の場合などは、個人で15,000円) |
注意が2つあります。1つは、初回は市区町村への申請が必要な場合があることです(以後の手続きは自治体に確認します)。もう1つは、施設の食費・居住費はこの上限の対象外であることです。
世帯全員が住民税非課税で、資産などの要件を満たせば、施設の食費・居住費は「補足給付」で軽減されます(こちらも申請が必要です)。医療費と介護費の両方の自己負担が重なった年には、合算で上限を設ける仕組み(高額医療・高額介護合算療養費)もあります。
介護保険の対象外リスト
おむつ代、施設の食費・居住費、限度額を超えた分は、介護保険の外です。ここを見落とすと見積もりがずれます。
- 施設の食費・居住費(補足給付の対象になる場合を除く)
- おむつ代などの日用品
- 支給限度額を超えて使ったサービスの全額
- 介護タクシーのうち保険の対象にならない部分など、サービス外の費用
「介護保険があるから大丈夫」でも「全部自腹」でもなくて、効く部分と効かない部分の境界線がはっきりしている、それが介護のお金の実像です。
始まる前に、我が家でやること
私は、金額の目標を先に決めるより、親の年金の月額と、負担割合の物差しと、お金の場所を先に確認する順番で整理しています。必要な備えの額は、介護の形や家計で変わります。
私の順番はこうです。
- 親の年金の月額を把握する(在宅の平均5.3万円、施設の平均13.8万円と並べてみる)
- 負担割合の判定の物差しを持っておく(割合証が届くのは認定の後。今は目安だけ)
- お金の場所を確認する(柱3の1本目「親に聞いておく最低限のこと」で書いた話です)
総額の大きさに圧倒されるより、「月いくらで、親の年金で回るか」に直して考える方が、備えとしては実用的だと思っています。
まとめ
平均は月9万円。でも見るべきは総額ではなく、親の年金で月々回るかどうかです。
介護が実際に始まったときの動き方は、柱2の1本目「親の介護が始まったら、最初にやること・連絡する順番」に、備えの全体像は全体地図「50代からの3つの備え|働き方・親の介護・終活を、順番に整える全体地図」にまとめています。
出典
- 厚生労働省「介護保険制度における利用者負担割合(判定基準)」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001581945.pdf
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(区分支給限度基準額・高額介護サービス費・施設費用の試算)https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
- 厚生労働省「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」(特別養護老人ホームは原則要介護3以上、要介護1・2の特例入所)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc0609&dataType=1&pageNo=1
- 地方厚生局「要介護認定の仕組みを理解する」(介護老人保健施設・介護医療院は要介護1以上、グループホームは要支援2以上)https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/000500518.pdf
- 生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」(2024年度 生命保険に関する全国実態調査。介護費用の平均:一時47.2万円・月9.0万円・期間55.0か月、在宅5.3万円・施設13.8万円)https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html?lid=mm479
- 確認日:2026年11月5日(2026-11-06追加分は11月6日)


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