親の葬儀には、いくらかかるか答えられますか?
私は答えられませんでした。喪主の経験もないので、ネットで調べると「平均200万円」とも「家族葬50万円」とも出てきて、幅が大きすぎて掴めない。その掴めなさの理由が、調べていくと見えてきました。
先に言っておくこと
- 第7回調査の形式別中央値では、直葬・火葬式の49.56万円から一般葬の122.01万円まで幅があります。実際の総額は、地域・参列者数・内容で変わります
- 「平均いくら」の数字は、そのまま信じない方がいいです。調査によって96万円から162万円まで開きます
- 備えとして、まず取り組みやすいのは3つです。親の希望を聞いておくこと、エンディングノートに残すこと、相談先を1つ決めておくことです
葬儀費用の「平均」は調査で違う
葬儀費用の総額は、調査によって96万円から162万円まで開きます。 数字を見るときは、調査時期、平均か中央値か、お布施の扱い、調査対象・設問を確認します。条件が異なるため、金額だけを単純比較することはできません。
| 調査 | 総額 | 集計の方法 | お布施 |
|---|---|---|---|
| 鎌倉新書「お葬式に関する全国調査」第7回(2026年公表) | 96.73万円 | 中央値 | 含まない側の整理 |
| 鎌倉新書 同調査 第6回(2024年公表) | 118.5万円 | 平均値 | 含まない側の整理 |
| 日本消費者協会「葬儀についてのアンケート調査」第12回(2022年公表) | 161.9万円 | 平均値 | 含む |
よくある誤解が、「118万円から97万円に下がった」という読み方です。第6回の平均値118.5万円と第7回の中央値96.73万円は、集計方法が異なるため単純比較できません。大きな出費をした一部の人が平均を引っ張り上げるのが葬儀費用の特徴で、「真ん中の人の実額」を見るなら中央値の方が実感に近くなります。
数字を見るときは、「いつの調査か」「平均か中央値か」「お布施を含むか」を確認するのが、まずの手がかりです。
形式別の費用:家族葬が主流
いま最も多く選ばれているのは家族葬で、実施した人の半数近くを占めます。費用の目安は、中央値で96万円ほどです。
| 形式 | 費用の中央値 | 実施割合 |
|---|---|---|
| 家族葬 | 96.39万円 | 47.0% |
| 一般葬 | 122.01万円 | ― |
| 一日葬 | 74.43万円 | ― |
| 直葬(火葬のみ) | 49.56万円 | ― |
(鎌倉新書 第7回調査)
注意点が1つ。「家族葬」には明確な定義がありません。通夜をやるか、親族以外を呼ぶか、会食をするかは、葬儀社ごとに範囲が違います(国民生活センターもこの点を明記しています)。だから「家族葬」という言葉だけでは比較ができなくて、中身の確認が要ります。
費用の内訳を3つに分けて見る
内訳は「葬儀社に払う基本料金」「人数で増減する飲食・返礼品」「お寺へのお布施」の3つに分けると、見積もりが読みやすくなります。
| 分け方 | 中央値の目安 | 中身 |
|---|---|---|
| 葬儀社への基本料金 | 72.02万円 | 祭壇・棺・搬送・式場・運営など |
| 飲食 | 11.67万円 | 通夜振る舞い・精進落とし(人数で変動) |
| 返礼品 | 13.03万円 | 参列者への品(人数で変動) |
| お布施 | 平均22.4万円(鎌倉新書 第5回)〜42.5万円(日本消費者協会) | 戒名料を含むかどうかで大きく変わる |
(基本料金・飲食・返礼品は鎌倉新書 第7回調査)
火葬料は、公営と民営で差があります。香典(平均で47.2万円〜74.1万円という調査があります)を差し引いた「実質負担」で考える見方もありますが、香典は当てにしすぎない方が無難だと思っています。
見積もりで確認する点
「家族葬50万円」の広告を見て依頼し、総額が200万円を超えた相談事例が、国民生活センターに寄せられています。広告の表示額だけで決めず、含まれる内容、追加費用の条件、総額見込みを確認します。
国民生活センターの公表(2026年6月)では、葬儀のトラブル相談は年間900件前後で続いていて、「高価格・料金」に関するものが半数を超えます。鎌倉新書の別の調査(2025年「葬儀費用の実態と納得度調査」。対象は葬儀相談サイト「いい葬儀」の利用者)では、見積もりより支払いが増えた人は約3人に1人で、増えた人の差額は平均19.5万円でした。
見積もりが出たら、確認するのはこの5点です。
- 明細が項目ごとに分かれているか(「一式」だけになっていないか)
- プランに含まれない項目は何か
- 追加費用が出るのはどんな条件か
- 金額は税込か税別か
- 断った場合、搬送費や解約費用はどうなるか
困ったら、消費者ホットライン「188」に相談できます。
費用はどこから出すか
原資の中心は親の預貯金です。健康保険からは埋葬料(原則5万円)が出ますが、口座が凍結された後の引き出しは、制度の上限と手続きの中で行うものになります。
- 加入していた健康保険から、埋葬料(家族が亡くなった場合は家族埋葬料)として原則5万円(対象者・申請先・必要書類は加入先に確認を)
- 国民健康保険の「葬祭費」は自治体ごとに金額が決まっています(親の住所地の自治体で確認を)
- 相続預金の仮払い制度:口座残高×3分の1×自分の法定相続分まで、1つの金融機関につき150万円を上限に、相続人単独で引き出せます(柱3の1本目でも触れた制度です)。払戻しには上限・要件・金融機関ごとの手続があるので、金融機関への確認が前提です。相続人同士で争いがある場合は、専門家への相談も考えてください
「葬儀のお金が親の口座に入っていて出せない」という心配は、この制度を知っていれば小さくなります。
慌てないために今できること
喪主を経験した人の6割超が「何も準備していなかった」と答えています。まず取り組みやすい準備は3つです。
- 親の希望を聞いておく(形式の希望、呼んでほしい人の範囲、菩提寺があるかどうか)。これは柱3の1本目「親に聞いておく最低限のこと」の話です
- エンディングノートに残す(柱3の2本目で書いた通り、最初は3か所だけで十分です)
- 相談先を1つ決めておく(見積もりを取る段になってから慌てて探さないためです)
葬儀の費用で困りやすいのは、悲しみの中で時間がなく、比較検討が難しい状態で決める場合です。その状態を作らないこと、つまり比較検討の時間を確保することは、想定外の費用を抑える一助になり得ます。
まとめ
費用の目安は、第7回調査の形式別中央値で49.56万円から122.01万円ほど。数字は「平均か中央値か、お布施を含むか」を確認して読み替える。そして、希望と相談先を先にそろえておくことが、費用の面でも気持ちの面でも備えになります。
終活の備えの順番は、全体地図「50代からの3つの備え|働き方・親の介護・終活を、順番に整える全体地図」にまとめています。
出典
- 鎌倉新書「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年2〜3月実施、直近2年以内に喪主を経験した全国40歳以上男女2,000件。費用は中央値)https://www.kamakura-net.co.jp/newstopics/12326/ /同 第6回調査(2024年、平均値)/同 第5回調査(2022年。お布施の平均22.4万円、受け取った香典の平均47.2万円)/同「第1回 葬儀費用の実態と納得度調査」(2025年。見積もりと支払いの差額。対象は葬儀相談サイト「いい葬儀」の利用者)
- 日本消費者協会「第12回 葬儀についてのアンケート調査」(2022年3月公表。総額平均161.9万円はお布施を含む。寺院へのお布施42.5万円、お香典の平均74.1万円。対象・回答数は報告書が有料のため未確認)
- 国民生活センター「増える家族葬や一日葬などの小規模葬儀をめぐるトラブル」(2026年6月公表。相談事例)https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260603_2.html
- 民法909条の2(相続預金の仮払い制度)
- 確認日:2026年11月5日


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