親の介護は、多くの場合、ある日突然始まります。親が倒れた、入院した、という電話がかかってくる形です。
私自身は、まだその経験をしていません。だからこそ、始まってから慌てないように、「始まったら、最初に何をして、どこへ連絡するか」だけを先に調べておくことにしました。
最初の連絡は3つだけ
介護が始まったら、まず連絡するのは次の3つです。ここでは、急に介護の検討が必要になった場合の、基本の連絡先を3つに絞って整理します。緊急時の連絡や、病院・施設から求められる対応がある場合は、そちらを優先してください。
- 会社の上司への第一報(今日休む・遅れることと、次に連絡する時刻)
- 病院の相談窓口(入院した場合。地域連携室・医療相談室)
- 親の住んでいる地域の「地域包括支援センター」
地域包括支援センターは、高齢者とその家族のための総合相談窓口で、市区町村が設置しています。相談は無料で、家族だけでも相談できます。介護のことが何も分からない段階でかけていい場所で、要介護認定の申請先や手順についても相談でき、必要に応じて申請の支援・代行の案内を受けられます。
ポイントは「親の住所地を担当するセンターにかける」ことです。自分の住所ではなく、親の住所です。自治体によって名前が違うこともあります(たとえば名古屋市では「いきいき支援センター」と呼ばれています)。
介護が始まった直後に一番避けたいのは、慌てて会社を辞めてしまうことです。介護や看護を理由に離職する人は、年間で約10.6万人います(総務省「就業構造基本調査」2022年)。一方で、働きながら介護をしている人は約365万人います。続けるための制度は揃っています。問題は、パニックの最中にその順番を知っているかどうかです。
この記事は、当日からの時系列で「連絡する順番」を整理したものです。
時系列マップ:当日 → 1週間 → 約40日 → 93日
介護の始まりは「当日・1週間・約40日・93日」の4つの節目で考えると、迷いません。
| 時期 | やること・連絡先 | 目的 |
|---|---|---|
| 当日 | 上司への第一報/病院で状態と相談窓口を確認 | 仕事と家族の両方に「つながる状態」を作る |
| 2〜3日 | 地域包括支援センターに電話 | 介護側の入口を開く |
| 1週間以内 | 要介護認定の申請を出す | 認定には時間がかかるので、先に出す |
| 約40日 | 認定結果が出る/ケアマネジャーとケアプラン | 介護サービスが回り始める |
| 体制づくり | 介護休業(通算93日)の枠で分担と体制を整える | 「自分が介護し切る」ためでなく、続ける体制を作る期間 |
当日:病院で聞くことと、上司への第一報
当日にまずやるのは、病院で状況を聞くことと、上司への第一報です。
入院の場合は、病院の地域連携室・医療相談室が退院後の生活の相談窓口です。担当の医療ソーシャルワーカーに「退院後のことが心配で」と伝えて、連絡先を控えておきます。あわせて、本人の同意を得られる場合は、親の保険証やお薬手帳がどこにあるかも確認しておくと、後が楽です。
会社への第一報で伝えるのは、基本的に3点です。
- 何が起きたか(親が倒れて入院した、等)
- 今日(または当面)休む・遅れること
- 次にいつ連絡するか
病名や詳しい容態まで話す必要はありません。管理職など引き継ぎが必要な立場では、引き継げる案件があれば、担当者と状況を共有しておくと、職場への影響を抑えやすくなります。
この日の用事に使えるのが介護休暇です。対象家族1人につき年に5日(2人以上なら10日)まで、時間単位でも取れて、当日の電話での申し出も認められています。通院の付き添い、認定調査の立ち会い、ケアマネジャーとの打ち合わせなど、スポットの用事はまずこれで回します。
2日目〜1週間:地域包括支援センターに電話し、要介護認定の申請を出す
この週に地域包括支援センターへ電話して、要介護認定の申請まで進めるのが目標です。
地域包括支援センターでは、状況を話せば、次に何をすべきかを整理してくれます。その流れで、要介護認定の申請につなげてもらえます(申請の進め方や、支援・代行の案内も受けられます)。
認定の手続きは、申請→認定調査(調査員が自宅や入院先を訪問し、主治医の意見書も取られます)→審査会の判定→結果の通知、という流れです。
ここで知っておきたいのは時間です。法律では申請から原則30日以内に結果を通知することになっていますが、2024年度の実績では全国の平均は39.9日でした(厚生労働省の公表)。つまり「認定は約40日仕事」です。結果が出るのが遅いと困るなら、申請だけは早く出すしかありません。認定されれば、効力は申請した日にさかのぼります。ただ、結果が出る前に使ったサービスや費用の扱いは、自治体やケアマネジャーに確認してください。いずれにしても、申請だけは早く出す意味があります。
ケアマネジャーが決まると、介護側は回り始める
ケアマネジャーが決まれば、介護サービス側は回り始めます。ケアプランの作成に利用者の費用負担はありません。
認定で「要介護1〜5」が出たら、居宅介護支援事業所のケアマネジャー(介護支援専門員)と契約し、ケアプランを作ってもらいます。ケアプランの作成に利用者の負担はありません。サービス探しを自分で抱え込まず、ケアプランができてから順に始めるのが正規の流れです(「要支援1・2」の場合は、地域包括支援センターが担当します)。
仕事側の制度は、この順番で使う
仕事の制度は「介護休暇(年5日)→介護休業(通算93日)」の順で使います。辞めるかどうかは、使える制度と見通しが見えてから考えても遅くありません。
制度は「軽いものから」ではなく「場面に合わせて」使うものですが、最初の動きとしては次の順番が分かりやすいです。
- 介護休暇(年5日/2人以上で10日、時間単位可)― スポットの用事に
- 介護休業(対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割可)― 体制づくりの期間に
- 介護休業給付金(雇用保険から、休業開始時の賃金の67%相当が目安・要件と上限あり)― 休業中の収入の支えに
大切なのは、介護休業の93日は「自分で介護をやり切るための日数」ではないことです。厚生労働省も、介護休業は「仕事と介護を両立できる体制を整える期間」と位置づけています。
そして2025年4月からは、介護に直面したことを会社に申し出た社員に対して、会社が介護休業や両立支援の制度を個別に説明し、利用の意向を確認することが義務になりました。つまり今は、「人事や総務に聞く」こと自体が、正解の第一歩になっています。一人で制度を全部調べ切ってから動く必要はありません。
なお、これらの休暇・休業は、要介護認定を受けていなくても使えます。対象になるのは「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」にある家族で、認定の結果を待つ必要はありません。
最初のうちに決めなくていいこと
施設のことや、仕事を辞めるかどうかは、最初のうちに決めなくて大丈夫です。
始まった直後は、次のことは決めなくて大丈夫です。
- 施設に入るか、在宅で続けるか
- 介護費用の総額をどうするか
- きょうだいの分担の最終形
- そして、会社を辞めるかどうか
辞めるかどうかの判断は、「認定の結果」と「使える制度と給付」が見えてからで遅くありません。最初の1〜2週間でやるのは、連絡と申請だけです。
まとめ:始まる前にできる準備
始まる前の準備は、「連絡先と順番」を知っておくことだけで十分に効きます。
私自身、親の介護はまだ始まっていません。だからこの記事は、経験談ではなく「順番の下調べ」です。そのうえで、始まる前にできる準備は小さいことです。
- 親の住んでいる地域の地域包括支援センターを調べ、電話番号をスマホに入れておく
- 自分の会社の就業規則や人事窓口で、介護休業・介護休暇の項目を確認しておく
- 親の保険証・お薬手帳の場所を、親に聞いておく
備えの全体像は「50代からの3つの備え|働き方・親の介護・終活を、順番に整える全体地図」にまとめています。働き方の備えについては、柱1の記事(役職定年で給料はどう変わる?)で書いています。
出典
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム(地域包括支援センターについて)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービス利用までの流れ」
- 厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会 資料(要介護認定の認定審査期間について。2024年度の平均39.9日は厚生労働省公表値)
- 厚生労働省「介護休業制度特設サイト」(介護休暇・介護休業の要件と日数)https://ikuji-kaigo.mhlw.go.jp/useful-post/9819/
- ハローワーク「介護休業給付金」の案内(賃金の67%相当)
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」(2025年4月施行の改正:個別周知・意向確認の義務化)
- 総務省「就業構造基本調査」2022年(介護をしている人629万人、働きながら約365万人、介護・看護を理由とする離職 年約10.6万人)
- 確認日:2026年11月4日


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